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営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)とは?事業の問題点や今後の動向を解説

営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)とは?事業の問題点や今後の動向を解説

現在、「農業+太陽光発電」を組み合わせた「営農型太陽光発電(ソーラシェアリング)」の事業が注目を浴びています。本記事では以下の項目に関して重点的に解説しています。

  • 営農型太陽光発電の特徴
  • 運営する際のメリット・デメリット
  • 今後導入が高まると予測される背景
  • 長期運用するポイント
  • 世界での動きや情勢

営農型太陽光発電は、「農業離れ」を防ぐ有効策としても注目され、次世代農業のビジネスモデルとなる可能性があります。農地問題を抱えている方は、ぜひ最後までご覧ください。

営農型太陽光発電の特徴

営農型太陽光発電とは、農地を利用した太陽光発電のことを指します。具体的には、農地に支柱を施工して太陽光発電を行う方法です。

設置したパネルの下では、通常通り農業を行うことができます。2つの事業を同じ土地で行うことで収益の安定性に繋がり、以下のようなメリットがあげられます。

  • 農業による収益
  • 太陽光発電の売電による収益

2つの事業が収益の安定化に繋がり、農業が不調でも太陽光で収益が確保できるので、現在注目を浴びています。

農地の一時転用許可件数は増加傾向にある

農地の一時転用許可件数
「【農林水産省】営農型太陽光発電について」をもとに作成

営農型太陽光発電事業を行うには、農林水産省に「農地の一時転用許可」の届け出が必要です。農地の一時転用許可とは、農地を農地以外の目的に転用することになります。

この届出を行わないと、営農型太陽光発電事業を行えません。農地の一時転用は、年々増加傾向にあり、以下にまとめています。

年度許可件数(件)下部の農地面積(ha)
2013年10215.5
2014年35155.0
・・・・・・・・・
2019年653180.1
2020年800132.7
2021年801148.8

2013年以降、許可件数と農地面積は右肩上がりになっています。

出典:【農林水産省】営農型太陽光発電について

栽培作物の分類は観賞用植物が多い

下部農地での栽培作物分類
「【農林水産省】営農型太陽光発電について」をもとに作成

営農型太陽光発電事業は、太陽光が遮断されても影響が少ない作物が推奨されています。以下に、栽培作物の割合(上位3位カテゴリ)をまとめています。

作物分類割合(%)種別
観賞用植物36さかき、しきみ、せんりょう、たまりゅう等
野菜29小松菜、白菜、ねぎ、かぼちゃ、いも類等
花き17ユリ、パンジー等

上記の表により、観賞用植物が上位3位カテゴリの大半を占めています。「さかき、しきみ」などの観賞用植物は、神事のお供え物として有名です。

出典:【農林水産省】営農型太陽光発電について

年1回の報告義務が必要になる

営農型太陽光発電の運営には、年に1回、農業委員会への報告が必要です。一時転用を行った場合、適切な営農事業が行われているか?という事にチェックが入る仕組みになります。

以下に、農業委員会へ報告する目的をまとめています。(一部抜粋)

  • 適切な営農が行われていること
  • 営農体制の確保
  • 農作物の品質の劣化が⽣じないこと
  • 下部農地活用が適切であること

上記の点に関しての報告が必要で、生産性が乏しい場合には設備撤去の可能性もあります。

下部農地では、生産性が前年度比2割減少した報告もされており、農業と太陽光の事業バランスが重要です。

出典:【農林水産省】農地転用を伴う太陽光パネルの設置について

営農型太陽光発電ガイドブックとは

令和6年4月、農林水産省公式HPにて「営農型太陽光発電取組支援ガイドブック」2024年度版が公開されています。ガイドブックには以下のような項目に説明がされています。(一部抜粋)

  • 営農型太陽光発電の概要
  • 導入事例と実績
  • 導入後の展望と課題
  • 営農型太陽光発電への取り組みフローチャート

農業は季節により収益が不安定なこともありますが、農地という強みを生かした別事業をミックスさせる事で土地の有効活用に繋がります。

現在、収益が不安定な農業従事者・新規就業者に向けた説明が記載されており、農林水産省公式HPより検索を行い、ダウンロードが可能です。

営農型太陽光発電に期待が高まる背景

営農型太陽光発電への期待が高まる3つの背景を解説します。

農業者視点のメリット

以下に、農業者視点でのメリットをまとめています。

  • 農業の収益にプラスアルファが見込める
  • 農地を有効活用できる
  • 新規就業者への魅力となる
  • 発電電力を自家消費などにも使用できる
  • 季節によって発生する収益差が減少する

大きな点は、「農業+太陽光発電」により、収益が増加することです。農業の収益は季節によって変動するため、太陽光発電で収益をカバーすることが可能です。

また、現在では少子高齢化に伴い、一次産業と言われる農業は労働人口減少が進んでおり、後継者問題も浮き彫りです。「農業+太陽光発電」という新たなビジネスが浸透すれば、農業に対しての期待が高まり新規就労者も増加する見込みがあるのです。

環境問題に関するメリット

営農型太陽光発電は、国内エネルギー自給率にも貢献が可能です。2020年度、日本のエネルギー需給率は「約11.3%」と、先進国38ヶ国と比べ低い水準になります。

現在でも、化石燃料・鉱物資源は、海外からの輸入に頼っている現状です。政府は2040年度には再エネ電源構成を4〜5割程度の見通しを立てているため、営農型太陽光発電が普及すれば再エネ比率に貢献することが可能です。

出典:【経済産業省】日本のエネルギー 2022年度版 「エネルギーの今を知る10の質問」

耕作放棄地を活用できる

営農型太陽光発電は、現在問題でもある耕作放棄地の有効活用が可能です。耕作放棄地とは、1年以内に作物の生産がされていない放棄された土地となります。

放置を続けると「害虫・害獣・悪臭」などの苦情に繋がり、耕作放棄地の件数も増加傾向にあり問題です。令和3年に、農林水産省経営局農地政策課長から「非農地判断の徹底について」農地法の対処が通知され、太陽光発電設置の条件が緩和されました。

青地とは

青地に関しても、上記の条件が合えば、太陽光発電を設置可能です。青地とは、農業振興地域内にある農用地区域内の農地を指し、白地は農用地区域外の農地で、青地と比べて利用規制は比較的緩くなっています。

通常、青地に野立ての太陽光発電を設置する場合は、白地に変更する必要があり、その手続きを「農振除外」と言います。申請をしても必ず除外出来るとは限りません。

営農型太陽光発電の場合は、青地のままでも設置する事が可能です。ただ、一般的に、青地は「農地以外では使用できない土地」と覚えておきましょう。

営農型太陽光発電の問題点

営農型太陽光発電への期待が高まっていますが、一方デメリットもあります。以下の項目で、解説を進めます。

長期的な運用体制が必要

営農型太陽光発電は、長期での運用体制が必要です。一時転用許可が降りても「10年間」となりますが、「返済期間20年間」として融資で導入している場合、10年後には再び一時転用許可を取り直し、融資額を返済する必要があります。

そのため、一時転用期間10年+再度申請にて一時転用期間10年の合計20年という長期的な事業戦略が必要です。以下に長期運用時のポイントをまとめています。

  • パネル性能が下がりにくい高性能パネルの選択
  • パネル面の定期的なメンテナンスを実施
  • メンテナンス費用削減方法の模索
  • 最終的な出口戦略の検討

ランニングコストを下げ、収益率を上げる方法を合わせて検討しましょう。

初期投資の金額がかかる

営農型太陽光発電は、通常の太陽光発電より初期投資費用が高くなります。以下に具体的な理由をまとめています。

  • 高所(2m以上)でパネル設置が必要になる
  • 水田地帯での地盤改良工事が必要になる
  • 施工実績・施工費などの比較対象が少ない
  • 農作業と重複できないので、工事日程に限りがある

2024年度、経済産業省の発表では、低圧太陽光「1㎾=26.7万円(工事設置費用)」とされています。規模にもよりますが、上記を加味すると導入費用が高くなります。

また、導入費用を削減するには、「補助金・リース」を活用する手段も有効です。

営農型太陽光発電に関する補助金制度

営農型太陽光発電で活用できる補助金を、以下に紹介します。

補助金名称対象者補助率
脱炭素化推進事業地方公共団体、民間事業者・団体等1/2
営農型太陽光発電システムフル活用事業民間事業者・団体等1/2
地域における太陽光発電の新たな設置場所活用事業地方公共団体、民間事業者・団体等1/2

「地域における太陽光発電の新たな設置場所活用事業」は、以下のように要件が定められています。

  • 営農地を活用した太陽光発電設備等の導入を行う事業
  • 農林水産業の生産活動に係る適切な事業継続の確保

上記条件を満たす場合、公募者は全員対象で補助率は1/2と大きな補助となります。「営農型太陽光発電システムフル活用事業」は、発電で得た電力を農作業へ活用するためのシステムなどに給付される補助金となります。

出典:【一般社団法人 環境技術普及促進協会】二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金

営農型太陽光発電に関する様々な取り組み事例

続いて、営農型太陽光発電を取り入れている企業や個人の取り組みについて紹介していきます。

企業:千葉エコ・エネルギー株式会社

千葉エコ・エネルギー株式会社は、4基の営農型太陽光発電を運営しています。栽培作物は「さつまいも、じゃがいも、ブルーベリー、ナス、いちじく、レモン」です。

同社は、自動追尾型搬送機などのスマート農業を組み合わせた「次世代スマート農業」の位置確立を目指しています。昨今のエネルギー価格高騰も踏まえ「儲かる農業」の発展を目標としています。

参考:千葉エコ・エネルギー株式会社

個人:池田一普氏

池田一普氏は、個人で農地を所有され、主に「お米」を栽培していました。農業での収益の減少に悩んだ時期があり、水田地帯を生かした投資を模索していました。

その時に営農型太陽光発電を選択して、現在も運営を継続しています。日中、パネルによって日陰ができるため、「暑さ半減・水田水入れ周期の長期化」の改善を行い、今後は発電電力をEV車供給するシステム・他者への売電も検討される予定です。

海外:バオフェン・グループ

海外でも、営農型太陽光発電の普及が進んでいます。具体的には、バオフェン・グループが、中国・寧夏回族自治区(ネイカカイゾクジチク)において「連系出力1,000MW(1GW)」で運営中です。

総面積は「2000ha(ヘクタール)」になり、同地区の砂漠化を防ぐと同時に、農家の雇用にも繋がっています。海外でも、大手企業・IT企業の参入も増えており、営農型太陽光発電は世界から注目されていることが分かります。

まとめ:営農型太陽光発電に関する期待は高まっている

本記事では、「営農型太陽光発電」に関して、特徴やメリット、デメリットなどを解説しました。農業者にとって、営農型太陽光発電は「農業+太陽光発電」という、2つの事業を同じ場所で運営できる大きなメリットがあります。

実際の導入事例・取り組みなども紹介しました。海外の大手企業などの参入も散見されることから、営農型太陽光発電の動向に注目が集まっています。

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