インバランスリスクとは?内容や改正のポイントをわかりやすく解説
太陽光発電の事業を行っている方は、インバランス制度に興味を持っていることと思います。
インバランス制度は、電力の供給と需要が合わないと停電が起りやすくなるため、その防止策として設けられています。
本記事では、インバランス制度の概要、計算方法、制度の改正点を詳しく解説をしています。
また、インバランスリスクの対処に悩んでいる方への対処法も紹介していますので、参考にしてください。
目次
インバランスとは
太陽光発電におけるインバランス制度について3つに分け解説します。
- インバランス料金制度
- 電力の需給バランス
- インバランスが対象となる制度
インバランス制度の内容
インバランス料金制度における”インバランス”の意味は、需要量と供給量とのズレのことを言い、このズレに対して料金が掛かってきます。
インバランス料金は発電計画と需要計画の2種類があり、「小売電気事業者が一般送配電事業者(電力会社)に事前に提出する予想される電力需要量」と「実際に消費者が使用した電力量」の差から料金を決定します。
請求や支払いを行うのは一般送配電事業者です。
- 電力が不足した場合:電力会社は追加の電力を購入し費用を請求
- 電力が余った場合:余剰電力を買い取る
インバランス制度は計画値同時同量制度とも呼ばれています。
電力需給バランスが崩れるとどうなる?
電力は電気の供給量と需要量を常に一致させることが前提です。供給量と需要量のバランスが崩れると電力系統の周波数が乱れ、周波数が低下し続けると最悪の場合ブラックアウトになるリスクがあります。
ブラックアウトは広範囲に電力が供給されなくなり復旧に時間がかかることから、防止策として需給バランスを整えるインバランス料金制度が導入されました。
太陽光発電の事業者は、不足した電力量の補填や余剰となった電力量の買い取りが発生するため、一般送配電事業者とインバランス料金を精算しなければなりません。
インバランスはFIP制度が対象
インバランス料金制度はFIP制度が対象となっているので、従来のFIT制度には適用されません。FIT制度では、一般送配電事業者が20年間にわたって固定価格で電力を買い取る義務を負っています。
FIT認定事業者は、インバランス料金を負担することなく運用を継続でき、電力の需要値や発電量の予測や計画書の提出などが不要です。
FIT制度において発生するインバランスは、一般送配電事業者や小売電気事業者が負担することになります。
以下の記事では、FIP制度の概要やプレミアム、導入するメリットを解説しているので、こちらも合わせてご覧ください。
インバランスリスクとは
インバランスリスクとは、需要量と供給量が異なる場合に発生するインバランス料金により、発電事業者の維持管理費用の負担が増えることを指します。
需要と供給が計画通りに行けばインバランス料金は発生しませんが、予測が難しいため実際はインバランスが発生してしまいます。
インバランスが増えるということは、インバランス料金の負担が増え収益が減少することになるので発電事業を行う上で大きなリスクです。
FIP制度で太陽光発電の事業をしている事業者は、インバランスリスクを十分に考慮しながら事業を運用する必要があります。
また、インバランス料金の算定は複雑で、電力の不足・余剰を判定する料金算定期間を経たのちに確定します。
通常、インバランス料金は翌々月以降に確定し請求されるので注意が必要です。
インバランスリスクの計算方法
インバランスリスクの計算は、電力が計画値に対して不足する場合と余剰になる場合とで計算方法が違います。それぞれの計算方法を解説します。
不足インバランスの場合
太陽光発電事業者が事前に提出した計画値に対して、実際の発電量が不足した場合、不足インバランス料金が発生します。
不足インバランス料金は、スポット市場と1時間前市場の加重平均値に、3種類の調整係数を加えることで計算されます。計算に必要な係数は以下の通りです。
- α:系統全体の需給状況に応じた調整項
- β:地域ごとの市場価格差を反映する調整項
- k, l:経済産業大臣が定めるインセンティブ定数
インセンティブ定数は「k」と「l」の2種類があり、「k」は不足インバランスの場合に適用されるので、不足インバランスは「加重平均値×α+β+k」という計算式で求められます。
余剰インバランスの場合
太陽光発電事業者が事前に提出した計画値に対して、実際の発電量が余った場合、余剰インバランス料金が発生します。
余剰インバランスは、「加重平均値×α+β-l」で計算され、余剰の場合も不足インバランスと同じ3種類の係数が利用されます。適用されるインセンティブ定数は「l」です。
加重平均値とは
加重平均とは、単純な平均とは違って、各データの重み(重要度)を考慮して計算します。テストの平均点の例を見てみましょう。
- 数学:90点(重み3)
- 英語:80点(重み2)
- 社会:70点(重み1)
まずは普通の平均を計算します。
普通の平均:(90+80+70)÷3=80
加重平均はそれぞれの教科の点数に重みをかけ、重みの合計で割ります。
点数に重みを掛けた合計:270 + 160 + 70 = 500
加重平均:500÷6(重みの合計)=83.33
例の場合、数学の重みが大きいので、普通の平均よりも数値が大きくなります。このように加重平均は、重要な部分を反映させて平均を求める方法です。
一日前市場と当日市場でインバランス料金が決まる
インバランス料金は、日本卸電力取引所(JEPX)で定められています。日本卸電力取引所(JEPX)とは、日本で唯一の卸電力取引市場を開設・運営する取引所で、一日前市場と当日市場の2種類があります。
一日前市場は、翌日に発電または販売する電力を前日までに入札し、売買を成立させる電力取引市場です。スポット市場とも呼ばれ、予測に基づいて計画的な発電・消費が行われます。
当日市場は実需給の直前まで活用可能な市場で、電力の受け渡し1時間前まで取引が可能です。
スポット市場で翌日に受渡する電気の取引後、実際の受渡までの間に不測の発電不調や需要急増が起った場合に、当日市場が対応します。
2022年におけるインバランス料金制度の改正ポイント
2022年以降のインバランス料金制度について、以下の5点について改正ポイントの概要を解説します。
- 算出方法に調整力のkwhを引用
- 出力抑制時のインバランス料金
- 電力ひっ迫時の補正インバランス料金
- ブラックアウト時の電力卸市場
- 沖縄エリアのインバランス料金
以下の見出しは、電力・ガス取引監視等委員会の「2022年度以降のインバランス料金制度について」を出典元として記載しています。
調整力のkWh価格を引用する算出方法
2022年以降は、調整力のkWh価格がインバランス料金の算出に使用されています。それ以前は、卸電力市場の加重平均値は実際のインバランス料金を反映できていませんでした。
改正後はインバランスの調整にかかるコストがkWh単位で直接反映されるため、インバランス料金が実際の需給状況や調整コストに基づいたものとなっています。
出力制御時はインバランス料金が0円/kWh
太陽光発電の出力制御時はインバランス料金の単価が0円/kWhになります。出力制御を行うことによりインバランスが調整されているので、過度に料金を徴収しないための措置です。
出力抑制は、電力供給が過剰にならないよう一時的に発電量を抑え、電力システムの安定性を保つために行われます。
電力需給ひっ迫時の補正インバランス料金
電力ひっ迫時は、リスクに備えた緊急の供給力追加確保や将来の調整力確保量の増加などの追加的コストが上がると考えられます。
また、上げ余力が低下することにより、インバランス料金を上昇させます。
インバランス料金が上昇することで時間前市場の価格も上昇し、事業者は追加の電力を供給することで収入が増えます。
【2023年】補正インバランス料金の見直しについて
2023年(令和5年)5月22日に、インバランス料金制度の見直しが行われ、「C値を300円/kWhに引き上げる案」や「補正料金算定インデックス3%以下の料金カーブを引き上げる案」が提示されました。
Cの値については、200円/kWhと設定された2020年以降も着実に増え続けていることから、2024年夏の需給状況などを踏まえたうえで検討することになっています。
ブラックアウト発生時の卸電力市場
ブラックアウトとは全域停電のことで、複数の事故が同時に発生して需給バランスが大きく崩れた場合に起こる可能性が高いです。ブラックアウトの復旧には時間がかかり、その間に様々な混乱が生じる可能性が高いでしょう。
ブラックアウトが発生したら、混乱の回避と市場参加者の公平性を保つために、卸電力取引市場を一時的に停止し、インバランス料金はブラックアウト発生前のスポット市場価格を適用します。
沖縄エリアのインバランス料金
沖縄エリアの算定においては調整力の広域運用が行われていません。
沖縄エリアで稼働した電力需給バランスを調整するため、コストを引用してインバランス料金が算出されます。引用するコストは以下の通りです。
- エリア内で発生した調整力の中で、コストが高いものから順に20MWh分の加重平均
- 上げ調整と下げ調整が同時に行われた場合、互いに相殺して残った調整力の中から、コストが高いもの順に20MWh分の加重平均
インバランスリスクをうまく管理できないときの対処法
インバランスリスクを上手く管理できないと経済的な損失が生じます。その対処法を模索している人は、以下の3点を考えましょう。
- FIT制度に移行する
- 蓄電池を活用する
- 太陽光発電所を売却する
それぞれ解説します。
FIT制度に移行する
FIT制度に移行すれば、安定した収入を確保しつつ、発電した電力をすべて売電することができます。
対象となる太陽光発電設備は50kW以上1,000kW未満の設備なので、該当する場合は売電を継続する方法としてFIT制度に移行する方法もあります。
FIT制度での売電事業は、固定価格買取制度であるため、インバランスリスクを心配する必要がありません。
蓄電池を活用する
FIP制度は、発電事業者に対しインセンティブが定められていますが、長期にわたり安定的に収益をあげることが難しいです。
しかし、太陽光発電設備と蓄電池を併用することにより売電計画を立てやすくなります。
例えば、電力市場の需要が高まる時期に、蓄電池に蓄えた電力を供給(売電)することで、多くの利益を上げることが可能になります。
太陽光発電所を売却する
インバランスリスクの対処法として、太陽光発電所を売却するのも有効な方法です。
中古の太陽光発電所は、過去の売電実績から利益を計算できることから、中古太陽光の市場(セカンダリー市場)は注目が集まり売り手市場となっています。
このため、設備を高価で売却できる可能性があり、まとまった現金が必要な場合や別の投資に資金を回したい事業者が、太陽光発電所を売却するケースが増えています。
インバランスリスクの仕組みやリスクを知っておくことは重要
太陽光発電の事業者にとって重要なインバランスリスクについて、制度の概要や計算方法、2022年の改正ポイントを解説しました。
電力の需給バランスが崩れると、事業者にとって大きな経済的リスクが発生しますが、対処法としてはFIT制度への移行や蓄電池の活用、太陽光発電所の売却などが有効です。
中古の太陽光発電所は、過去の売電実績が確認できる点、運用をスムーズに開始できる点などから、投資家から大変人気が高く売り手市場となっています。
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