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新電力事業

新電力の切替(法人)

新電力とは、電力自由化以降に新規参入した小売電気事業者(電力会社)のことです。これまで電力業界は東京電力や関西電力など、各地域にある大手電力会社10社が発電事業から小売事業までを独占していました。しかし、2000年から電力の小売自由化が進められ、2016年4月に全面的に小売り自由化が解禁されたことにより、様々な業種の企業が小売電気事業者として新規参入するようになりました。この電力自由化以降、新規参入してきた電力会社のことを「新電力」と呼んでいます。

新電力の仕組み

電力は次の3部門を経て、各企業に送電されています。

電力は次の3部門を経て、各企業に送電されています。 電力は次の3部門を経て、各企業に送電されています。

電力の小売自由化が始まるまでは大手電力会社がこの3つの機能を独占してきましたが、小売自由化以降は③の小売部門に様々な新電力が新規参入することとなりました。新電力の多くは①の発電部門(発電設備)を持たず、③の小売部分のみの事業を行っているため、一般的にはJEPX(日本卸電力取引所)と呼ばれる電気の卸市場から電力を市場価格で仕入れ、大手電力会社が所有する②の送配電部門に送配電網の利用料金である「託送料金」を払って、需要家に電気を送る仕組みを取っています。

電力の小売自由化の歴史

電力の小売自由化は、2000年から2016年にかけて段階的に実施されてきました。

電力の小売自由化の歴史

①2000年3月 特別高圧の契約(契約電力が2,000kW以上)が電力会社を自由に選べるようになった。
②2004年4月 高圧大口の契約(契約電力が500kW〜2,000kW)が電力会社を自由に選べるようになった。
③2005年4月 高圧小口の契約(契約電力が50kW〜500kW)が電力会社を自由に選べるようになった。
④2016年4月、低圧の契約(契約電力が50kW未満)が電力会社を自由に選べるようになった。
2016年4月以降、「電力自由化」「新電力」という言葉が一般化されました。

新電力の数

2022年現在、新電力(小売電気事業者)の数は752社(2022年現在)となっています。小売電気事業の免許を取得するためには国の審査が必要ですが、業種は問わない内容となっています。また、電力会社と言っても、発電設備も持たず、JEPX(日本卸電力取引所)から電気を仕入れて販売することで免許を取得することができるため、様々な業種の企業で小売電気事業の免許を所得しています。

新電力切替の
メリット
新電力切替の
デメリット

新電力切替のメリット

メリット01

毎月の電気代が安くなる

新電力切替の最大のメリットは、電気代が安くなることです。電気代を安くするためには、企業の使用状況に応じた最適なプランを選択する必要がありますが、一般的には、業種ごとに次のような電気代削減率が実現しています。

業種別削減実績例
業種 電気代削減率(年間)
製造業 28.07%
不動産業・物品賃貸業 15.09%
医療・福祉 25.16%
学術研究・専門技術サービス 37.80%
運輸業・郵便業 40.41%
電力規模平均削減率
契約電力 平均削減率
50kW未満 19.47%
51kW~100kW未満 16.72%
101kW~300kW未満 14.52%
301kW~500kW未満 13.01%
500kW以上 14.29%
メリット02

脱炭素経営を推進することができる

新電力の中には、再エネ100%の電力プランを販売している会社があります。これは、通常の電力に加えて非化石証書などの環境価値をセットにして販売するプランです。このような電力に切り替えると、企業としては「CO2を輩出しない電力を使用している」ということとなり、脱炭素経営を推進する有効な手段となります。

メリット03

複数エリアの契約を一本化できる

これまでは全国に拠点がある企業では、各エリアごとに大手電力会社と電力契約を締結する必要がありましたが、全国に対応している新電力であれば、全国複数エリアにある拠点の電力契約を一本化することができます。

メリット04

電気の地産地消など地域貢献できる

新電力は民間企業だけでなく、地方自治体が運営しているケースもあります。そのため地元自治体や応援したい地域の新電力がある場合には、その企業を選び、契約することができます。

新電力切替のデメリット

デメリット01

電気代高騰のリスクがある

新電力に切り替えれば、必ず電気料金が安くなるわけではありません。料金プランが合っていない場合もありますが、燃料調整額の高騰やJPEXにおけるスポット価格の高騰により、電気代が高騰する場合があります。

デメリット02

契約期間の縛りや違約金が発生する場合がある

電力会社によっては、毎月の料金は魅力であっても、契約期間の縛りがあったり、解約時に大きな違約金が発生する場合があり、注意が必要です。

デメリット03

倒産や撤退リスクがある

2023年3月時点で3割程度の新電力が倒産、事業撤退に追い込まれました。なお、新電力会社が倒産してもすぐに電気が止まることはありませんが、新しい電力会社を探す必要があるなど、手間がかかります。新電力を検討している場合は、経営状況などを事前に確認しておく必要があります。

FAQ

よくある質問

新電力に切り替えることによって、電気の質が悪くならないのか?

電気の質は、どこで契約しても変わりません。
なぜなら、新電力は電気の小売を行っているだけで、電気を送る送配電については、これまで通り大手電力会社が運用しているため、どこで契約しても同じ電気となります。

新電力に切り替えることによって、停電したりしないのか?

停電リスクも、大手電力会社と契約していた時と変わりません。
これも、新電力は電気の小売りを行っているだけで、電気を送る送電線については、これまで通り大手電力会社が運用しているため、どこで契約しても同じ電気となります。

新電力が倒産・撤退した場合、電気は止まらないのか?

新電力が倒産・撤退した場合には、最終保障供給というセーフティ契約に切り替わるため、電力供給が止まることはありません。最終保障供給とは、倒産した新電力の代わりに一般送配電事業者が電気を供給する制度のことです。具体的に、新電力が倒産・撤退する場合には、電気が止まる15日ほど前までに、新電力がその旨を消費者に通知しなければならないというルールになっています。消費者はこの通知を受け取ってから他の電力会社と契約することで、電気を継続して使用することができるようになっています。仮に、新しい電力会社とすぐに契約できない場合でも、最終保障供給として自動的に地域の一般送配電事業者が電気を供給する仕組みになっているため、電気が止まるわけではありません。ただし、最終保障供給は電気代が割高なため、新電力会社の倒産・撤退を知ったら、すぐに他の電力会社と契約することが重要です。

新電力の切り替えに際して、新たに電線を引く必要があるか?

電線を新たに引く必要はありません。
送配電部分については、これまで通り大手電力会社が運用するため、新たに電線を引く必要はありません。

新電力の切り替えに際して、新たに工事は必要か?

新電力の切り替えに際しては、電力メーター(スマートメーター)の交換が必要です。この工事は基本的には新電力で費用を持つことが一般的となっているため、無料対応となっています。

新電力に切り替える際、今の電力会社へ解約届を出す必要があるか?

必要ありません。切替先である新電力が手続きを行います。「お客様番号」や「メーター番号(供給地点特定番号)」などをご報告いただくだけで手続することができます。

2022年多く新電力が倒産・撤退した理由

これまで、大手電力会社や新電力の料金プランは、次のような料金体系になっておりました。

一般的な電気契約の料金内訳

一般的な電気契約の力金内訳

燃料費調整額とは、化石燃料の価格変動分を電気代に反映したもので、過去3ヶ月分の燃料費をもとに毎月変動する仕組みになっています。しかし、JPEXによる市場価格は30分ごとに変動するスポット価格となっているため、市場価格が急激に変動した場合には燃料調整額では対応できなくなってしまったのです。これまでは市場価格が急激に変動することがほとんどなかったため、燃料調整額で十分対応できたのですが、近年、異常気象によるブラックアウトなどで市場価格が大幅に変動したため、多くの新電力が「売れば売るほど赤字」となり、倒産や事業撤退となってしまったのです。これを受けて、多くの企業が料金プランを「市場連動型プラン」に変更しました。

市場連動型プランの料金内訳

一般的な電気契約の力金内訳

電力量料金とは、JEPXの市場価格に経費を上乗せしたものです。つまり、電力量料金は市場価格に連動させているため、電力会社が赤字にならないプランになっています。このように聞くと、市場価格のリスクをお客さんに追わせているように聞こえますが、燃料費調整額についても同様の仕組みだと言えます。また、市場連動型プランは大手電力会社のプランよりも電気代が高くなるリスクがありますが、太陽光の導入量が増加した現在、昼間の市場価格が0.01円/kWhなど格安になっていることから日中に稼働が多い工場や事務所では、一般的な電気契約プランよりも市場連動型プランの方が電気代の削減幅が大きくなっています。さらに蓄電池を導入すれば、電気代の安い時間帯の充電して、高い時間帯に電気を使用するなどの対策を行うことで、さらに電気代を下げられる可能性があります。

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