太陽光発電所の売却でかかる税金は?売却に有利なタイミングも解説!
太陽光発電を売却する際は、所得税や住民税などの税金がかかります。
設備の売却を検討しているけど、税金事情が詳しく分からないという方も多いのではないでしょうか。
本記事では、以下のように、太陽光発電所の売却時にかかる税金について深掘りします。
- 設備の売却時にかかる税金
- 売却のタイミング
- 税額のシミュレーション
- 税金を抑えるためのポイント
記事後半では税額のシミュレーションも行っているので、太陽光発電所の売却を検討している方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
個人が太陽光発電を売却する時にかかる税金
個人・法人でかかる税率・計算式は異なります。まずは個人にかかる税金から解説します。
所得税
個人で運営されている太陽光発電所の所得税は以下のような計算式になります。
譲渡所得×所得税率=所得税
譲渡所得は以下の式で計算することができます。
売却金額ー取得費ー特別控除(50万円)=譲渡所得
取得費用とは、発電所購入金額から「減価償却」費用を差し引いた金額です。取得費用は、後半に掲載する税額のシミュレーションで詳しく解説します。
取得費には、譲渡費用(売却時に発生する手数料(仲介手数料))が含まれています。
住民税
個人で運営されている太陽光発電所の住民税は以下のような計算式になります。
譲渡所得×住民税率=住民税
住民税の税率は、9%または5%が適用されます。住民税率は、設備保有期間に応じて税率が大きく変化するので、後ほど詳しく説明をします。
消費税
個人で運営されている太陽光発電所の消費税は以下のような計算式になります。
売却額×10%(一律)
消費税に関しては、一律10%の税率が適用されます。
消費税は1989年(平成元年)に「3%」として導入されましたが、平成26年に「5%→8%」に上昇、令和元年には「8%→10%」まで上昇しています。
そのため、太陽光発電所を導入した年月によっては、「差額分の消費税」を納めることが必要になります。
例として、以下に導入年月日と差額税率の一覧表を記載しています。
導入年月日 | 当時税率 | 現在税率 | 差額税率 |
2017年(平成29年) | 8% | 10% | 2% |
2021年(令和3年) | 10% | 10% | 0% |
太陽光発電の売却は運用から5年以上が目安
所得税や住民税の税額は、譲渡所得金額に所得税の税率や住民税の税率をかけて最終的な税額が決まります。
課税対象額は、運用から5年を境に以下のように変わります。
5年以下 | 譲渡所得金額の全てが課税対象 |
5年を超える | 譲渡所得金額の半分が課税対象 |
上記の表の通り、5年以下で売却した場合は、譲渡所得金額の全てが課税対象となります。
節税を考慮して売却する場合は、運用から5年を超えてから設備を売却することがポイントです。
法人が太陽光発電を売却する時にかかる税金
ここまで個人が太陽光発電所を売却する際の税金について解説しました。続いて、法人が売却する場合の税金について解説します。
法人税
法人で運営されている太陽光発電所の法人税は以下の計算式になります。
売却益-(売却時点の帳簿価額+売却手数料)=所得所得×法人税率=法人税
帳簿価格とは、購入金額から減価償却を控除した額になり、手数料は仲介手数料などを指します。
法人税は売却益によって変動します。以下に一覧表を作成しましたので、担当者はチェックしましょう。
所得金額(万円) | 税率(%) |
600 | 19 |
700 | 19 |
799 | 19 |
1000 | 800万円(19%)200万円(23.2%) |
注意点は、各種控除を使ったあとの「所得が800万円」を超えると税率が変化する点です。
上記の表で「所得800万円」までは「19%」が適用されます。
一方、「所得1000万円」の場合は、「800万円以下は19%が適用」され、「800万円から1000万円までの差額200万円」には「税率23.2%」が適用されます。
そして上記所得金額に関係なく、「資本金1億円」を超える法人は「23.2%」税率が適用です。
担当者としては、「所得金額」に注意が必要です。
法人事業税
法人事業税は地方自治体へ納付する税金で、計算式は以下のようになります。
所得×法人事業税率=法人事業税
法人事業税は各都道府県によって異なるため確認が必要です。
例として、宮城県・滋賀県の法人事業税を比較してみます。(※両都道府県、資本金1億円以上の外形標準課税法人で事業開始日がR4年4月1日以降)
宮城県(所得額) | 税率(標準) |
400万円以下 | 1.18% |
400万円~800万円 | 1.18% |
800万円以上 | 1.18% |
ちなみに滋賀県の法人事業税は以下のような税率になります。
滋賀県(所得額) | 税率(標準) |
400万円以下 | 1.0% |
400万円~800万円 | 1.18% |
800万円以上 | 1.18% |
法人事業税は所得額に応じて変化する税金です。
上記表では、宮城県と滋賀県で比べましたが、以下によって変化します。
- 各自治体
- 普通法人
- 特別法人
- 資本金大小
- 事業開始年度
法人担当者は確認を忘れないようにしましょう。
法人住民税
法人住民税は、法人事業税と同様に、地方自治体へ納付する税金です。
以下に、各都道府県の税率を記載しています。
都道府県 | 税率(標準) |
北海道 | 1.8% |
東京都 | 10.4% |
大阪府 | 2.0% |
岡山県 | 1.8% |
沖縄県 | 1.8% |
上記の表は、「資本金1億円以下、年間法人税額1,000万円以下」が条件です。
法人住民税は、「軽減税率」という税率が存在し、税金の軽減が受けられる制度もあります。
法人担当者はチェックを忘れないようにしていきましょう。
設備の売却時にかかる税金をシミュレーション
個人が太陽光発電所を売却する場合について、実際に所得税と住民税の税額をシミュレーションしてみます。
※以下の税額は参考値としてご覧いただき、個別の税務問題はお抱えの税理士などにご相談ください。
- 取得価額 :1,500万円 (土地代150万円含む)
- 償却方法:定率法
- 所有期間:8年
- 売却価額:1200万円(土地代150万円含む)
譲渡所得の計算式は以下のようになります。
譲渡所得=売却金額ー(取得費+譲渡費用)ー特別控除
今回のシミュレーションの場合、取得費の内容は以下の通りです。
太陽光パネル | 取得価格1350万円、耐用年数17年、定率法、所有期間8年後の残存価格:494万円 |
土地 | 取得価格:150万円 |
譲渡費用 | 売却手数料:50万円 |
上記の数値を譲渡所得の計算式に当てはめてみます。
売却金額(1200万円)ー取得費(494万円+150万円+50万円)ー特別控除(50万円)=譲渡所得(456万円)
所得税・住民税の税率をかけると、以下のように税額を求めることが可能です。
所得税:456万円×15.315%(所得税率)=69.8万円
住民税:456万円×5%(住民税率)=22.8万円
太陽光発電の売却で税金を抑えるためのポイント5つ
続いて、売却時に税金を抑えるポイントを5つ厳選して解説します。
①土地で節税する
土地の所有期間が5年を超えるかどうかで税率が大きく変わります。土地の売買は分離課税に分類されていて、以下の税率が適用されます。
所有期間 | 税率 |
所有期間が5年を超える(長期譲渡所得税) | 所得税:15%住民税:5% |
所有期間が5年以下(短期譲渡所得税) | 所得税:30%住民税:9% |
土地についても5年を超える場合は、税率が低く設定されています。
②消費税を節税する
令和元年には、消費税が「8%→10%」となり、運営者としては何とかして「節税」を目指したいところです。
太陽光発電においても、消費税を節税できる方法があります。以下について解説していきます。
- 免税事業者
- 簡易課税
- 原則課税
免税事業者
免税事業者とは、売電による課税売上高1,000万円以下の場合を指します。
そのため課税事業者を選択した事業者は、再度「消費税課税事業者選択不適用届出書」の書類提出が必要です。
本来であれば、課税事業者は「売電収入1,000万円以下」でも消費税を納付する必要があります。
この届出を出すことで、免税事業者になることが可能です。
一方、デメリットもあり、「譲渡価格は税込みで計算」することが必要となり、譲渡価格が大きくなり所得税・住民税が増加します。
以下の表は、譲渡価格1,000万円のパターンの紹介です。
事業者種類 | 譲渡価格 |
課税事業者 | 1,000万円 |
免税事業者 | 1,100万円 |
所得税・住民税は「譲渡価格-(必要経費+特別控除)×税率」となるので、基準金額が大きくなると納税額が増えるので注意が必要となります。
簡易課税
簡易課税とは、申請をすることで課税事業者になることができますが、原則2年間は継続する必要があります。
簡易課税制度の場合は、売電収入が1,000万円~5,000万円の金額になると対象です。
売却時の譲渡価格に対する消費税を軽減することが可能です。簡易課税の消費税に関する計算式は以下の通りです。
売却時の譲渡価格×40%
本来であれば、100%かかる消費税を簡易課税を選択することで、60%軽減することが可能です。
以下は、売却価格3,000万円の例です。
課税種類 | 計算式 | 納付消費税 |
原則課税(通常) | 3,000万円×10% | 300万円 |
簡易課税 | 3,000万円×0.04% | 120万円 |
簡易課税を選択するには、「消費税簡易課税制度選択届出書」を前年末までに提出することを忘れずにしましょう。
原則課税
原則課税は正規の課税方式で、売電収入が5,000万円以上になると適用されます。
5,000万円を超えると節税などが適用されません。
上記簡易課税では「みなし課税」と呼ばれ、太陽光の場合は第3種事業パーセンテージが適用になります。
実際の粗利益に対しては「簡易課税」か「原則課税」どちらが節税できるのか?長期的な事業戦略での判断も必要です。
③税務サポートが手厚い太陽光発電業者に相談する
太陽光発電では、売却時の税務処理が多く、困難を極める場面が多いです。
簡易課税制度では「みなし課税」など、あらかじめ決められた税率を加味して、長期的な事業計画が必須になります。
個人・法人問わず副事業・副業として運営されている方には多忙となり、誤って申告をするとやり直しや罰則の対象にもなりかねません。
新たに税理士と契約すると高額な費用も発生します。
税務処理の経験があり、運営者の節税に貢献できる専門業者に売買を行い税務サポートを受けるのもオススメです。
④青色申告制度を活用する
青色申告は個人事業主などで多くの事業者が活用しています。最大65万円の税額控除を受けることが可能です。
期間は最大10年間で、赤字が出た年は翌年へ赤字繰り越しする選択も可能になります。
他の事業との損益通算合算も可能で、副事業・副業の申告としては最適です。
申告の期間は毎年「2月16日〜3月15日までの1ヶ月間」のみになります。
所轄税務署に行き書類提出する方法か、e-TAX(電子申請)で申請する方法が選択でき、混雑を避けるには「e-TAX(電子申請)」がオススメです。
⑤減価償却期間を意識する
太陽光発電所は減価償却資産に該当します。
減価償却期間とは事業を行うために導入した設備を経費計上できる税制システムで、導入する設備により期間が異なります。
一般的なパソコンは5年間と短期間ですが、太陽光設備は「17年間」と長期間にわたり償却ができ経費削減が可能です。
償却方法は「定額法」「定率法」と2種類あり、詳細については後述します。
定額法
定額法とは、毎年決まった金額を経費計上する方法です。具体的な方法は、以下のように計算します。
- 購入金額を償却期間で割って計算(17年間)
- 国税庁で決められた償却率を購入金額にかけて計算
例えば、500万円で発電設備を導入した場合を見ていきましょう。
償却計算方法 | 計算式 | 金額 |
購入金額を年数で割る | 500万円÷17年間 | 29.4万円 |
決められた償却率をかける | 500万円×0.059 | 29.5万円 |
太陽光発電所の場合、国税庁より定額係数「0.059(H19年4月1日以降)」が定められています。
定額法は計算が簡単で、初年度の諸費用計上を少なくすることも可能です。
定率法
定率法とは、定額法とは違い初年度の経費計上が最大で、年々経費計上が少なくなる方法になります。
以下に、500万円で発電設備を導入した場合の定率法計算式を記載しています。
年度 | 計算式 | 金額 |
1年目 | 500万円×0.118 | 59万円 |
2年目 | 500万円-59万円=441万円441万円×0.118 | 52万円 |
太陽光発電所の場合、国税庁より定額係数「0.118(H24年4月1日以降200%定額法)」が定められています。
購入後、5年前後の太陽光発電所売却を検討されている場合は、定額法より有効な節税手段です。
一方、運用年数が経過すると節税効果が少なくなるデメリットもあります。
まとめ:太陽光発電所の売却は運用から5年以上が目安
本記事では、「太陽光発電所の売却時における税金」に関して、以下の内容を解説しました。
- 太陽光発電所の売却時に所得税・住民税・消費税がかかる
- 太陽光発電所を売却する適切なタイミング
- 税額のシミュレーション
- 税金を抑えるためのポイント
もし税務問題で不明点がある場合は、お抱えの税理士などに相談することが大切です。
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